不動産鑑定士合格に必要な勉強時間は?試験難易度やおすすめの勉強法も解説!

「不動産鑑定士合格にはどのくらい勉強時間が必要なの?」

「短答式・論文式の勉強方法はどうしたらよい?」

不動産鑑定士試験に挑戦したいが、どのくらい難しいのか、どの程度勉強しなければならないのか分からずと不安な人も多いでしょう。

不動産鑑定士試験は宅建などよりも難関の試験ですが、テキストでしっかり勉強して独学で合格している人もいます。

今回は不動産鑑定士試験に合格するために必要な勉強時間について、試験の難易度やおすすめの勉強法とあわせて詳しく解説します。

この記事をご覧になれば、不動産鑑定士試験に合格するための勉強時間・勉強法などがよく分かるでしょう。

不動産鑑定士試験の勉強時間についてざっくり説明すると

  • 不動産鑑定士試験は2段階ある
  • 不動産鑑定士試験は難易度が高い
  • 1日の勉強時間の目安は開始時期によって異なる

不動産鑑定士試験の勉強時間の目安

グラフ

まず不動産鑑定士試験の勉強時間の目安をご説明します。

難易度が高く最低2000時間は必要

不動産鑑定士に合格するためには最低でも2000時間の勉強時間が必要です。その人の経験や知識量によって違いもありますが、平均的には2000~4000時間、場合によっては5000時間超とかなりの時間が必要です。

1年半で合格を目指す場合、この勉強時間は1日平均5時間勉強しなければ達成できない数値です。

不動産鑑定士は難易度が高く、弁護士や公認会計士とともに3大国家資格と言われることもあります。

何が3大資格かは諸説ありますが、少なくとも他の難関資格である司法書士や税理士と同じくらいの難易度で、勉強時間もほぼ同様です。

難しさの理由の1つに、試験が短答式と論文式の2段階になっていることがあります。合格率は短答式が約34%・論文式が約1%ですが、両方の試験を通ってはじめて資格を取得できるので、最終的な合格率はとても低い、難易度の高い試験です。

勉強時間には幅がある

不動産鑑定士に合格するために必要な勉強時間には大きな幅があります。主な理由は、人によって勉強を始める前の知識量が異なること、試験が2段階になっていることの2つです。以下で詳しく見ていきます。

人によって知識量が異なる

まず、経験や持っている資格によりスタートラインが異なることがあります。不動産鑑定士は不動産や関連法律の広範な知識が必要です。知識のストック量によって、勉強時間は大きく違います。

もう1つのポイントは試験の「科目免除制度」です。国家資格の有無や大学院での研究内容により、試験科目が一部免除されます。

科目が1つでも減れば大きなメリットです。具体的には論文試験免除で、司法試験合格者は民法公認会計士合格者は会計学と合格した試験科目(民法か経済学)が免除されます。

どちらも合格は簡単ではありませんが、勉強時間を短縮できる効果は絶大です。

また民法・経済学・会計学について、大学で3年以上教授か准教授の職にあった人や、博士号をもっている人も該当科目の試験が免除されます。以下に資格条件と免除科目を表にしておきます。

条件 免除される科目
公認会計士合格 民法・経済学・会計学のうち受験した科目
司法試験合格 民法
大学において3年以上右記科目の教授または準教授の職にあった 民法・経済学・会計学のうちの該当科目
右記科目の研究により博士の学位を授与された 民法・経済学・会計学のうちの該当科目

上記資格を取得している人や条件を満たしている人は、論文試験の科目を一部免除されるので早期に合格を目指せるのです。

宅建士を持つ人も早期合格を目指せる

宅建士を持つ人も早期合格を目指せます。宅建士だけで科目免除になることはありませんが、宅建士試験のための学習内容、特に民法や行政法規などは鑑定士試験の内容と被っており、勉強したことを活かすことができるからです。

民法はもちろん、短答式試験で出題される行政法規は都市計画法など関係法律が多く、勉強を一から始めるのは大変です。

そこで宅建士を目指した受験勉強や不動産系の実務経験は、間違いなくアドバンテージになります。実際に宅建士と不動産鑑定士の資格をダブルライセンスとして取得している人も多いです。

試験が2段階である

試験は短答式と論文式の2段階です。短答式から3カ月おいて論文式試験があるので、同じ年に資格取得を目指す人が多いです。一方で、2年あるいはそれ以上の時間をかけて合格を目指す人も結構います。

論文式の難易度は高く、短答式よりも周到な準備が必要です。しかし、仕事が多忙などの関係で短期間に集中して勉強できない人もいるでしょう。

幸い短答式試験に合格すれば、論文式試験の受験資格の有効期限は3年間あります。つまり、チャンスは3回あるので、とりあえず短答式に合格して、その後じっくり勉強して論文式に挑戦することも可能です。

短答式試験にかかる時間

短答式試験の勉強時間は、800~1200時間が目安です。試験科目は行政法規鑑定理論の2つで、五肢択一のマークシート形式になっています。

各科目40問・200点満点、合格ラインの目安は7割で、論文式よりは易しいです。満点を取る必要はありませんので、合格をラインを目指して重要ポイントをおさえて効率よく勉強しましょう。

1年で資格取得を目指すなら、短答式対策にもなる時間のかかる論文対策に力を入れることも大事です。

論文式試験にかかる時間

論文式試験にかかる勉強時間は、1200~2900時間が目安です。試験科目は、民法・経済学・会計学、鑑定理論 論文・鑑定理論 演習の5科目です。

600点満点で合格ラインはおおむね6割ですが、科目ごとの最低ラインがあります。

論文は消去法で解答を導き出すことはできません。暗記だけでなく学習内容の正確な理解と的確な論述力が求められます。短答式に比べると勉強時間がどうしても長くなります。

科目別の学習時間

見てきたように、短答式試験は鑑定理論・行政法規の2科目、論文式試験は鑑定理論 論文・鑑定理論 演習と民法・経済学・会計学の計5科目です。

科目別に必要な勉強時間の目安・1日あたりの時間・勉強期間を表にまとめておきます。

科目 勉強時間 1日あたりの時間 勉強期間
行政法規 300~400時間 2~3時間 6~9カ月
民法 300~600時間 0~3時間 12~18カ月
経済学 300~600時間 0~3時間 12~18カ月
会計学 400~700時間 1~3時間 12~18カ月
鑑定評価 理論 1200~1500時間 2~3時間 12~18カ月
鑑定評価 演習 200~400時間 1~2時間 4~6カ月

ご覧のとおり鑑定評価理論に必要な勉強時間が飛び抜けて多いです。鑑定評価理論は短答式でも論文式でも出題されます。

鑑定評価は言うまでもなく鑑定士の仕事の基本です。実際にどのように評価したらよいのかすぐ納得できるように、理論を確実に身に付けておかなければなりません。関連法律についても、しっかり学習しておくことが大事です。

鑑定評価理論の知識を身に付ければ、鑑定評価演習の勉強も進めやすくなります。鑑定評価理論は時間をかけて勉強する意味があるのです。

1日あたりの勉強時間の目安は?    

勉強法

ここでは1日あたりの勉強時間の目安を見ていきます。

1日4~5時間勉強するのが一般的

必要な勉強時間は人にもよりますが、1日4~5時間の勉強が一般的です。

以下の表は、勉強の開始時期の違いによって1日に必要な勉強時間がどう変わるのかを示したものです。トータルの勉強時間が3000時間・4000時間・5000時間の場合の1日あたりの平均勉強時間です。

3000時間の場合

開始時期 1日あたりの平均勉強時間
3年前開始 2時間42分
2年前開始 4時間6分
1年前開始 8時間12分
半年前開始 16時間24分

4000時間の場合

開始時期 1日あたりの平均勉強時間
3年前開始 3時間39分
2年前開始 5時間29分
1年前開始 10時間57分
半年前開始 21時間55分

5000時間の場合

開始時期 1日あたりの平均勉強時間
3年前開始 4時間34分
2年前開始 6時間51分
1年前開始 13時間42分
半年前開始 27時間19分

3年前から勉強を始めれば、どの場合も4~5時間以内の勉強時間で比較的余裕があります。しかし、半年前に始める場合はほぼ一日中勉強が必要で達成不可能な場合もあります。遅くとも1~2年前には勉強を始めるべきでしょう。

もちろん必要な勉強時間は経験・資格などで違います。また学生・社会人など立場によって、一日に可能な勉強時間も変わります。社会人は5~6時間以内が無理のない勉強時間と考えた方がよいです。

合格者の実際の勉強時間

参照:TAC「不動産鑑定士試験合格に必要な勉強時間は?」の記事より

上のグラフは合格者の実際の勉強時間を表したものです。平日には4~5時間学習する人が3割強と一番多いです。

一方、休日は7時間以上勉強する人が半分以上です。特に10時間以上の人が34%と最も多くなっています。

このように合格者は休日に長時間勉強する人が多いです。特に社会人は平日は時間確保が困難なため、休日に集中的に勉強しているのでしょう。

合格のためのおすすめの勉強法は?

勉強法

ここでは、不動行産鑑定士試験に合格するためのおすすめの勉強法について、科目ごとに学習する上でのポイントをまとめて紹介します。

行政法規

行政法規の知識は、鑑定士の仕事をする際に必須です。土地・不動産関係法など数多くの法律を学習する必要があります。暗記がメインですが、理解して覚えましょう。難しければ語呂合わせで丸暗記です。

また、先に不動産系の資格をとっておくと役立ちます。不動行産鑑定士は宅建士などの資格と試験内容がかなり被っており、出題形式もほぼ同様だからです。

鑑定評価に関する理論

出題範囲は、不動産鑑定評価基準と不動産鑑定評価基準運用上の留意事項です。対策は暗記と過去問を繰り返すことにつきます。

まず基準を暗記しましょう。そのうえで短答式は過去問を繰り返し解いていきます。論述式の勉強は、基準の暗記に加えて過去問や予想問題の解答パターンの重要部分の暗記も必要です。解答の構成を覚えておけば、不安なく対応できます。

民法

出題範囲は、民法の不動産規定や借地借家法・建物区分所有法です。民法の出題範囲も不動産関係資格の出題範囲と重なっています。

論文式の場合は難易度も違いアウトプット能力も必要で、宅建士などの知識だけでは不十分ですが、民法の基礎づくりには有効です。宅建士試験などの勉強をしておくこと、実務を経験しておくことがおすすめです。

経済学

出題範囲は、ミクロ・マクロの経済理論と政策論です。出題形式はさまざまです。暗記だけでは対応が難しく、数学力が求められるので苦手意識を持ってしまう人もいます。

大事なことから逃げずに理論やモデルを数式で理解することが大切です。きちんと向き合えば応用力がつき、確実に得点力が向上していきます。

会計学

出題範囲は、財務会計論です。会計学は暗記モノではなく、理論や定義の勉強だけでは身に付きません。おすすめは、簿記3級や2級を勉強することです。

簿記の手続きの流れを理解することで、引当金などの用語の意味・処理の仕方も理解しやすくなります。会計学の基礎力が付きますので、その先の勉強も捗るでしょう。

独学におすすめのテキストは?

独学で合格を目指す方におすすめのテキストがあります。TACのもうだいじょうぶ‼シリーズの不動産鑑定士 2021年度版テキストです。

初学者でも無理なく取り組むことができるように、過去問を徹底的に分析して頻出問題を中心にまとめたテキストになっています。短期間で効率的な学習が可能で、合格までの実力を確実に身につけることができるでしょう。

予備校や通信講座を受講するのもあり

不動産鑑定士合格を目指す方は、予備校や通信講座を受講する方法もあります。

予備校は多くの合格者を輩出した長年の実績があります。その蓄積に基づいたノウハウが詰め込まれているテキストは、最短での合格を目指す力になります。

また、論述問題の自己採点はどうしても甘くなりがちですが、専門講師に客観的にチェックしてもらえば効果的な学習ができます。

特に他の通信講座より低料金で受講できるLECは、シンプルで質の高いテキストと手厚いサポート体制が魅力です。

質問対応・添削指導も万全で、論文式問題もプロの講師が丁寧に添削してくれます。合格のためのスキルがしっかり身につくコスパ抜群の講座です。

気になる方はぜひLECの公式サイトで詳細をご覧ください。

不動産鑑定士の難易度は高い?

ここでは、国土交通省が発表している不動産鑑定士試験の短答式、論文式それぞれの過去5年分の試験合格率を紹介します。

短答式試験の合格率

短答式試験の過去5年間の合格率は以下のようになっています。

年度 合格率
令和4年 36.3%
令和3年 36.3%
令和2年 33.1%
令和元年 32.4%
平成30年 33.4%
平均 34.3%

合格率の平均は34.3%で、ここ数年は合格率がやや増加しているとわかります。

なお、合格者の男女比は基本的に5:1程度で、合格者の平均年齢は毎年38歳前後です。

論文式試験の合格率

次に、論文式試験の合格率も見てみましょう。

年度 合格率
令和4年 16.4%
令和3年 16.7%
令和2年 17.7%
令和元年 14.9%
平成30年 14.8%
平均 16.1%

論文式試験の合格率は5年間で1番高い年でも20%弱であり、短答式試験と比べると合格が難しいとわかります。

しかし、短答式試験と同じように合格率が微増しています。

不動産鑑定士合格に必要な勉強時間についてまとめ

不動産鑑定士合格に必要な勉強時間についてまとめ

  • 最低でも短答式で800時間、計2000時間は勉強する必要
  • 試験が2段階で人によって知識量が異なるため、勉強時間には幅がある
  • 鑑定評価理論は必要な勉強時間が飛び抜けて多い
  • 独学ならテキストの活用や予備校・通信講座の受講がおすすめ

不動産鑑定士試験に合格するために必要な勉強時間について、試験の難易度やおすすめの勉強法とあわせて解説してきました。

不動産鑑定士試験は難易度が高く、最低でも2000時間は勉強する必要があります。効率よく勉強して短期間での合格を目指したいものですが、独学の場合なら、効果的なテキストの活用や予備校・通信講座の受講がおすすめです。

不動産鑑定士の役割は大きく、活躍場面は増えても、重要性が低下することはありません。合格を目指して勉強を始めましょう。

資格Timesは資格総合サイト信頼度No.1