保育士の給料が安いのはなぜ?保育士の平均収入や手取りアップの方法を解説
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「保育士の給料が他の職種と比べて安いのはなぜ?」
「保育士が給料を上げるための方法はある?」
このような疑問や不満を抱えている保育士の方も多いのではないでしょうか。
統計上からも、保育士の給料が安く抑えられてしまっていることが分かっています。
保育士は社会的に重要な役割を果たしつつ激務をこなしていますが、残念ながら待遇が恵まれているとは言えません。
しかし、近年は政府としても保育士の待遇を改善するための動きを進めているため、今後が待遇改善が進んでいくと考えられています。
こちらの記事では、保育士の給料が安い理由や手取り収入をアップさせる方法などを解説していきます。
待遇を改善させたいと考えている保育士の方に役立内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください!
なぜ保育士の給料は安いのかざっくり解説すると
- 保育士の平均年収は400万円に届いておらず、かなり安い
- 公定価格制度などが保育士の給料が安い原因となっている
- 処遇改善手当などを通じて待遇改善の動きは進んでいる
- 保育士の需要は常に高く、売り手市場の状況が続くと見込まれる
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保育士の給料は安い?
保育士は、保育園の勤務して未就学の子どもたちを預かります。
生活の世話だけでなく遊びを通じて社会性を育むなど、保護者に代わって子どもの成長を見守る責任重大の仕事を行います。
また、連絡帳の作成などを通じて保護者とコミュニケーションをとるため、多忙である点も特徴です。
責任重大で多忙な仕事であるにもかかわらず、保育士の平均年収は一般的な年収よりも50万円ほど安いです。
実際に、保育士の退職理由として給料や年収の少なさなどの待遇面への不満を挙げる人が最も多く、仕事と給料とのバランスが悪いと言えるでしょう。
保育士の平均年収
政府の統計調査によると、保育士の平均年収は約382万円でした。
子どもを常に見守る必要がある重大な仕事を行いつつ膨大な業務量をこなさなければならず、平均年収は安いと言わざるを得ません。
年齢(歳) | 勤続年数(年) | 所定内実労働時間数(時間) | 超過実労働時間数(時間) | 現金給与 | 年間賞与その他特別給与額(万円) | 年収(万円) |
---|---|---|---|---|---|---|
20~24 | 2.0 | 170 | 3 | 22.14 | 46.83 | 312.51 |
25~29 | 4.6 | 167 | 3 | 24.29 | 71.03 | 362.56 |
30~34 | 7.5 | 166 | 3 | 25.48 | 74.46 | 380.22 |
35~39 | 9.8 | 164 | 4 | 26.88 | 83.86 | 406.42 |
40~44 | 10.6 | 165 | 4 | 26.47 | 80.73 | 398.37 |
45~49 | 12.4 | 166 | 3 | 27.97 | 85.53 | 421.17 |
50~54 | 14.6 | 166 | 2 | 28.35 | 94.13 | 434.33 |
55~59 | 13.7 | 166 | 2 | 27.55 | 87.67 | 418.27 |
60~64 | 17.3 | 165 | 2 | 25.85 | 67.34 | 377.54 |
65~69 | 23.6 | 166 | 4 | 25.51 | 65.50 | 371.62 |
70~ | 29.0 | 167 | 0 | 28.19 | 84.51 | 422.79 |
30代から50代にかけて基本的に年収は上がり続けていますが、450万円に届いていないことがわかります。
しかし、保育士は人手不足の状況にあるため、70代以上でも保育士の仕事は続けることができる点はメリットです。
保育士資格を取得すれば何年経っても保育士を続けることができるため、給料は高くはないものの「長い目で見れば安心して稼げる」と言えるでしょう。
公立・私立保育園を月給で比較
参考:文部科学省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果( 収支状況等)
上記のグラフのように、私立保育園の平均月給は約262,000円、公立保育園の保育士の平均月給は約280,000円となっています。
私立保育園を運営しているのは民間企業で、公立保育園を運営しているのは自治体です。
つまり、公立保育園で働く保育士は地方公務員で、勤続年数が長ければ給料も高くなる特徴があるため、私立保育園よりも給料が高くなりやすい傾向にあります。
私立保育園によっては、経営状態次第では昇給が行われないケースもあるため、給料が伸び悩んでしまうこともあります。
保育士の給料が安いのはなぜ?
「激務をこなしているのに、なぜ保育士の年収や手取り収入は安いんだろう」と思う人は少なくありません。
保育士の給料が安い理由として、公定価格制度や日本の歴史的背景が挙げられます。
公立の保育園で働く保育士は地方公務員で、私立保育園で働く場合も公定価格制度により保育料を保育園が決めることはできません。
園の必要経費などを考えると、保育士の給料に充てられる分は少なくなってしまうことから、構造的にも保育士の給料が伸びづらいのです。
公定価格制度があるから
保育士の給料は、厚生労働省が定めている「公定価格」によって決まります。
公定価格には職員の事業費や管理費だけでなく人件費も含まれています。
人件費は国家公務員給与の改定状況によって決定され、事業費・管理費は物価の動向等を踏まえて毎年度改定される点が特徴です。
私立の保育園の場合、運営状況次第では保育士の給料が安く抑えられているケースも少なくありません。
公立保育士はあくまで地方公務員だから
公立保育園に勤務する保育士は、あくまでも「地方公務員」としての身分を有しています。
民間企業と異なり、手厚い身分保障を受けながら安定した収入を得られるメリットがありますが、年功序列なので収入は伸びづらいです。
公務員の給料は「給料表」「俸給表」で定められた級と号給によって給料の額が決定するため、年齢と実務経験が給料を決める重大な要素となります。
制度上の構造から、若手保育士は給料が安く抑えられてしまっているのが現実です。
日本の歴史的背景にもよる
日本の歴史的に、保育の仕事は「子育ての延長」のように捉えられてきた背景があります。
「子育ての延長に高い賃金を支払う必要は無い」という考えも、保育士の待遇が高まらない大きな要因と言えるでしょう。
保育士の仕事では高い専門門生が求められますが、専門性を深く理解されず「仕事」という認識がされていなかったことから、保育士の給料が安く抑えられてしまっています。
保育士の給料は安くて当たり前なのか?
保育士は社会的に重要な役割を果たしていますが、様々な理由から保育士の給料が安く抑えられてしまっています。
日本では長らく保育士の給料が安く抑えられていたため、「保育士の給料が安くて当たり前」と考えている人も少なくありません。
以下で、保育士の給料を安くて当たり前と考える人がなぜいるのか、その理由をまとめました。
子供と遊んでいるだけだと思われている
保育士の仕事は「子どもと遊んで一緒に昼寝をしているだけ」「ストレスがほとんどない仕事」と思っている人も少なくありません。
しかし、保育士は多くの園児の生活の世話をしなければならず、また一緒に遊ぶ際にも体力を必要とします。
また、園児の世話だけでなく保護者への連絡帳作成や行事の準備などの仕事もあるため、実際には多忙を極めています。
保育士の仕事のリアルを知らず、表面だけの印象しか持っていない人が多い点も、保育士の給料が伸び悩む要因となっています。
スキルのいらない簡単な仕事だと思われている
「保育士の仕事に特別なスキルはいらない」と考えている人は多いです。
しかし、保育士は子どもと遊ぶ体力だけでなく、子どもと信頼関係を築く方法や社会性を育むための工夫など、様々な専門的な知識とスキルが要求されます。
また、そもそも保育士になるためには国家資格が必要で、保護者と連絡を取り合うためのコミュニケーションスキルも求められています。
保育士のつらさや大変さが世間に浸透していない点も、大きな問題と言えるでしょう。
利益を出す仕事と思われていない
保育園は、一般的な企業と異なり営利を目的に運営されていません。
実際、民間企業が運営している私立の保育所であっても、保育料は公的な保育所と変わらないため収益が伸びづらい構造となっています。
付加価値を提供して保育料を挙げようとすると、子どもを預けられない家庭が出てきてしまう問題が出てきてしまいます。
保育園は共働き世帯にとって無くてはならない存在ではありますが、利益を出す仕事と思われていない点も給料が伸びづらい要因と言えるでしょう。
保育士の給料は上がっているの?
最近では、保育士の仕事の大変さや責任の重さに対する認知がようやく広がってきました。
- 保育士の処遇改善を求める声が出てきた
- 待機児童が社会問題になった
などの背景から、政府による「処遇改善手当」など保育士の待遇を高めるための政策も行われています。
実際に、保育士の給料が徐々にではありますが上昇傾向にあります。
共働き世帯が増えれば保育園のニーズは高まることから、保育園で人手不足が起きてしまうのは社会的にも大きな問題です。
そのため、今後も処遇改善は行われる可能性が高く、保育士の待遇改善が進む可能性は高いでしょう。
今後の保育士の需要について
待機児童が社会問題となったように、保育士の供給は追いついていません。
以下で、有効求人倍率などの公的なデータを参考にしながら、今後の保育士の需要について解説していきます。
保育士の求人倍率は高水準で推移
保育士の有効求人倍率は非常に高いです。
最新のデータによると、2022年時点で保育士の有効求人倍率は全国3.12倍となっています。
全業種の有効求人倍率が1.44倍であることを考えると、保育士の人手不足はかなり深刻と言えます。
共働き世帯の増加に伴って、今後も保育士の需要が高まっていくことが予想されることから、引き続き高い求人倍率が続く公算が高いでしょう。
保育士のニーズはどんどん増している
厚生労働省の「保育所等関連状況取りまとめ」によると、保育所等数は右肩上がりに伸びています。
2015年時点での保育所等数は2万8,783カ所でしたが、2022年には3万9,244カ所に増えています。
保育園が増えれば保育士が必要になることから、保育士のニーズはどんどん増していると言えるでしょう。
つまり、今後も保育士は高い需要が続くと見込まれるため、将来性はかなり高いと判断できます。
保育士が賃金を上げるには?
保育士が給料や手取り収入を上げるための方法はいくつかあります。
「保育士の給料は安くて当たり前」と思うのではなく、自分で年収や手取り収入を増やすための努力を行うことも重要です。
以下で、保育士が自分の努力で賃金を上げる方法を紹介していきます。
処遇改善制度Iを利用する
保育士不足や待機児童問題の解決策として、政府は「処遇改善制度」という制度を作りました。
処遇改善等加算Iは、「基礎分」「賃金改善要件分」「キャリアパス要件分」の3つで構成されており、有効活用すれば自身の月給や手取り収入を上げることができます。
- 基礎分:職員の平均経験年数に応じて給料が加算される(加算率は2%~12%)
- 賃金改善要件分:基準となる年度の賃金水準に対して改善を行った保育園に対して、勤続年数が11年未満の場合は5%、11年以上の場合は6%が加算される
- キャリアパス要件分:賃金改善要件分に含まれる(必要な改善や研修を行わない場合、賃金改善要件分が2%減少する)
上記のように、平均経験年数が長くなればなるほど給料が上がりやすくなる制度設計です。
コツコツとスキルを高めながら働くことで、徐々に待遇は改善される公算が高いと言えるでしょう。
処遇改善制度IIを利用する
処遇改善加算IIとは、新たな役職に応じた処遇改善を行うことで保育士としてのキャリアアップを支援する制度です。
キャリアアップ研修と呼ばれる、保育士の資質向上を目的とした研修が行われており、規定の研修を修了すれば役職に就くことができます。
処遇改善等加算Ⅱは、就いた役職に応じて月額5000円または月額40,000円の手当が支給される仕組みとなっています。
要件 | |
---|---|
月額5000円の処遇改善 | 職務分野別リーダーや若手リーダーが対象。保育経験がおおむね3年以上あり、研修を修了した上で担当分野において職務分野別リーダーを務めている |
月額40,000円の処遇改善 | 副主任保育士や専門リーダーが対象。おおむね7年以上の保育経験があり、職務分野別リーダーを経験した上で役職を務めている |
一般的に、保育士は役職自体が少なく主任保育士になるためには約10年の現場経験を積む必要があります。
しかし、処遇改善等加算Ⅱを活用することで、
- スキルと知識を磨くことができる
- 役職についてモチベーションを高められる
- キャリアアップが賃金に反映される
上記のようなメリットが期待できるでしょう。
保育園が実施する手当を利用する
保育園によって、各種手当の充実具合が異なります。
- 住宅手当
- 職務手当
- 資格手当
- 扶養手当
- 精勤手当
など、様々な手当の制度を整えている保育園があります。
手当が充実していれば月給と手取り収入アップにつながるため、
- 手当に要件をクリアする
- 手当が充実している保育園に転職する
上記の方法で収入を増やすことが可能です。
国や自治体が実施する手当を利用する
国や自治体も保育士を確保するための各種支援制度を整えています。
条件をクリアできている場合、国や自治体が実施する手当を利用することも有力な選択となるでしょう。
手当・助成の種類 | 条件 |
---|---|
保育士宿舎借り上げ支援事業 | 一人暮らしをする保育士に対して、市区町村や国が家賃を補助する制度 (東京都の場合、補助金上限は8万2000円) |
保育士就職準備金貸付 | 保育士登録から1年以上経過し、 保育士施設での勤務経験がない方や離職後1年以上経過している人が対象で、 再就職の準備金として20万円を上限に無利子でお金を借りられる。 該当施設で2年間業務に従事すれば、貸付金の返還が免除される |
未就学児をもつ保育士に対する保育料の一部貸付事業 | 未就学児がいる保育士に対し、子どもの保育料の一部を貸付ける制度。 月額2万7000円を上限に、保育料の半額を無利子で借りられる。 該当施設で2年間業務に従事すれば、貸付金の返還が免除される |
上記のように、保育士の就労を経済的に支援する様々な制度があります。
もし利用できそうな制度があれば、積極的に活用して経済的負担を抑えることをおすすめします。
資格を取得する
保育士が業務に関連する資格を取得すれば、月給や手取り収入アップにつながる可能性があります。
しかし、すべての保育園において資格手当の制度が整備されているわけではないため、事前に確認する必要があります。
具体的には、
- 幼稚園教諭免許
- 幼児食インストラクター
- 絵本専門士
- リトミック指導員
などの資格を取得すると、資格手当の対象になる可能性があるため、確認してみると良いでしょう。
また、資格を取得すると転職の際のアピールにつながる可能性もあるため、キャリア形成の面でも資格を取得するメリットは非常に大きいです。
待遇のいい保育園へ転職する
現在勤務している保育園が
- 基本給が安い
- 各種手当がほとんどない
- サービス残業が常態化している
という場合、待遇のいい保育園へ転職することも有力な選択肢となります。
すぐに給料を上げたい場合は、手当などが充実している園へ転職すると手っ取り早く収入を上げることが可能です。
特に、近年は転職市場が拡大している上に保育士は慢性的な人手不足の状況にあるため、売り手市場の状況です。
保育士向けの転職サイトを活用すれば効率よく転職活動を進めることができるため、ぜひ有益なサービスを有効活用しましょう。
手取りアップが見込める保育士以外の職種
保育士資格を保有している人が活躍できるのは、保育園だけではありません。
保育士以外にも、手取りアップが見込める職種は多くあるため、興味がある職種があれば転職を検討してみてください。
院内保育
院内保育とは、医療施設に併設された保育園です。
病院で働く保育士や事務員の子どもを預かる施設で、企業内保育園と似ています。
院内保育の仕事は、生活の世話や保護者との連絡であるため、一般的な保育園に勤務する保育士の仕事と大差ありません。
病院で勤務している従業員のための施設なので勤務時間が長くなりがちですが、一般の保育園よりも給料が高くなる傾向にあります。
大規模な医療施設に院内保育が設けられているケースが多いため、近隣に大規模病院などがある場合は求人を調べてみると良いでしょう。
ベビーホテル
ベビーホテルとは、20時以降に子どもを一時預かりする施設です。
厚生労働省の定義にでは、ベビーホテルは
- 夜8時以降の保育
- 宿泊を伴う保育
- 利用児童のうち一時預かりの児童が半数以上
上記の3つの要件のいずれかを満たしている施設が該当します。
看護師や介護職員、トラックドライバーをはじめとした「深夜に就業している人」にとって、非常にありがたい存在と言えるでしょう。
なお、ベビーホテルは基本的に就業時間が夜勤になるため、給料が高い傾向にあります。
ベビーシッター
ベビーシッターは、保護者から依頼を受けて必要な世話全般を引き受ける仕事です。
ベビーシッターのサービスを提供している企業に就職するケースと、自身が個人事業主となって働くケースがあります。
1人で業務を行うため責任が思い特徴がありますが、一人一人の子どもとコミュニケーションを密にとって成長を見守れるメリットがあります。
利用者の自宅などで働くため神経を使うことになりますが、信頼関係を築ければ大きなやりがいを感じることができるでしょう。
具体的な仕事内容は依頼者である保護者次第で、生活の世話だけでなく学校や習い事への送迎を行うこともあります。
なぜ保育士の給料は安いのかまとめ
なぜ保育士の給料は安いのかまとめ
- 子どもと遊んでいるだけと思われている点など、様々な理由から給料が安く抑えられてしまっている
- 保育士が自分の努力で収入を増やす方法はある!
- 処遇改善手当や資格手当を活用すれば収入アップが期待できる
- 現在の職場に不満がある場合は転職を検討しよう
「保育士の給料が安いのは当たり前」という認識は誤っています。
政府が保育士の待遇を改善するための政策を行っている点も、社会的に重要が役割を果たしていることを示唆しています。
また、自助努力で収入を上げるための方法があるため、現在の待遇に不満がある場合は資格取得や転職を通じて環境を変えていきましょう。