行政書士試験の記述式問題の傾向と対策|配点やおすすめ問題集も紹介!
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行政書士
宮城彩奈
「行政書士試験にチャレンジしたいけど、記述式問題ってどんな問題が出題されるの?」
「記述式対策の具体的な方法が知りたい!」
行政書士試験には選択式の問題だけでなく記述式の問題も出題されます。
記述式問題は選択式と比べると正誤の基準が曖昧なので、苦手意識を持っていたりなかなか得点できず悩んでる方も多いと思います。
そこでここでは記述式問題の基本事項を押さえつつ、出題の傾向や具体的な勉強法まで解説します!
これを読めば記述式対策はバッチリです!
行政書士の記述式問題についてざっくり説明すると
- 記述式問題を苦手とする受験生は多い
- 配点が高いため記述式を捨てて合格するのは困難
- 日頃の過去問演習が対策の基本
行政書士試験の記述式問題とは?
配点の20%を占める大事な3題
まず、行政書士試験の配点を見てみましょう。
試験科目 | 出題形式 | 出題数 | 満点 |
---|---|---|---|
法令等 | 5肢択一式 | 40問 | 160点 |
多肢択一式 | 3問 | 24点 | |
記述式 | 3問 | 60点 | |
法令等 | 計 | 46問 | 244点 |
一般知識 | 5肢択一式 | 14問 | 56点 |
合計 | 60問 | 300点 |
(※令和4年度行政書士試験)
行政書士試験には、宅建士試験や社労士試験には無い「記述式問題」という出題がされます。
記述式問題は1問20点の配点と1問あたりの配点が高く、毎年3問出題されています。
行政書士試験では以下のように合格基準点が定められています。
(1) 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が、122点以上である者 (2) 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が、24点以上である者 (3) 試験全体の得点が、180点以上である者
法令科目全体の得点配分が244点です。そのため、仮に記述式の部分を全く手をつけない場合、従来半分以上の得点で合格基準に近づくところが、2/3以上の得点をしなければ合格できないという厳しい戦いになってしまいます。
300点満点の行政書士試験の内、記述式の問題だけで配点の20%を占めているため、苦手だからといって無視することはできません。
合否に直結する非常に大事な問題であるため、十分な対策が必要となります。
どんな問題が出るの?
記述式試験は1問40字程度と決まっており、出題範囲は民法が2問、行政法が1問となっています。
法律の条文や過去の判例を中心に出題されるので、判例の結果だけでなく細かい用語などもおさえておかないと手を付けられない可能性もあります。
時には条文をまるごと書かせるような受験生泣かせの出題ケースも過去にありました。
また、部分点が存在すると考えられており、完璧な答えを書けなくても惜しいことを書ければ何点かもらえる可能性があります。
そのため、確実に覚えていなかったり自信が無い問題を出されたとしても、できる限りのことは記述しておきましょう。
記述式問題の傾向と対策
行政書士試験を受ける上で避けて通れない記述問題の傾向と、その攻略法についてです。
もったいないケースで挙げられるのが漢字の間違いです。このようなケアレスミスは減点要素となりえるので防いでおく必要があります。
また、いざ条文や判例を文章として書こうとすると、うまく書けないこともあります。
そのため記述式を解けるための基礎知識をある程度(5択問題で7~8割の得点ができるくらい)までつけておく必要があります。
民法の記述のポイントは債権法
民法の記述式問題は2問出題され、長文形式のものが出されます。
問題文を素早く正確に理解したうえで、出題内容となっている状況に適合する民法の条文や判例を思い出す必要があります。
その上でうまく文章にまとめて答えを40字以内で回答する必要があるので、非常にレベルの高い問題と言えるでしょう。
最近は債権法の範囲が多く出題されてるという傾向があるため、主に債権に関する条文や判例は、択一式の対策中から意識しておきましょう。
民法記述の勉強は法令暗記から
記述式問題に臨む前提として、まず正確な基礎知識がないと正しく解答できません。
試験範囲を少なくとも2周以上は学習し、しっかりと民法の仕組みを理解する必要があります。
そのうえで過去の試験で出題された法令や判例をコツコツと暗記していきましょう。
さらに問題への答え方も重要です。
例えば、「~の場合どのような規定でどのような要件が必要となるか?」という問いには規定、必要となる要件を明確に記述し、聞かれていることすべてに回答する必要があります。
問題演習を繰り返して解答パターンに慣れつつ、文章を書く力、またわかりやすく簡潔にまとめる力を身につけておきましょう。
民法大改正を踏まえての勉強が必須
2020年に民法大改正が行われたため、変更点が試験内容にも影響を少なからず与えています。
よって、従来のテキストでは対応しきれていない内容が、改正ポイントとして試験に出題される可能性があるため、事前の対策でこのポイントを押さえておく必要があるのです。
具体的には、以下の3つのポイントが試験に出題される可能性があるため、事前に理解しておく必要があるでしょう。
- 債権法の改正
- 相続法の改正
- 特別養子縁組制度の改正
行政法記述のポイントは読解力
行政法は、条件設定が複雑な問題が出題されるケースが多いため、まずは正確に問題文を読むことを心掛けましょう。
問題の設定や条件をうまく理解できないために誤答してしまう方が多く、とてももったいないです。
配点が高い問題になるため、このようなケアレスミスは絶対に避けましょう。
行政法記述の勉強は図解
登場人物が多く、それぞれの関係性が複雑な行政法の記述問題では、過去問等を使ったトレーニングがとても有効です。
読解力を鍛えて正確に設定を把握する力を養う必要があります。
苦手な人は問題を解く際に問題文の余白などを使って関係を図に書いてまとめると解きやすくなります。
自分なりの方法や工夫で、内容を府に落とし込めることで、得点を伸ばしていきましょう。
記述式の点数が伸びない人へ
記述式問題の練習をしていても「点数がなかなか伸びない」「模範解答といつもずれてしまっている」と悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
主に3つの理由が挙げられますので、以下で解説していきます。
5択の問題はとけますか?
記述の点数が伸びなかったり、問題によって解けたり解けなかったりする人は前提となる基礎知識が不足している可能性が高いです。
基礎知識が不足していると、記述式の勉強をしても正解に至るプロセスが曖昧になってしまいます。
また、文章もうまくまとまらないことが多く、これではなかなか点数は伸びません。
目安としては選択式の問題で安定的に7~8割の得点ができる水準を目指しましょう。
それまでは記述式問題の対策に手を出さずに基礎知識のインプットに集中し、基本的な知識、根拠となる条文や判例を丁寧に読み込んでいきましょう。
答えではなく過程を見ていますか?
択一式の試験だと、過去の判例の結論部分だけを暗記しておけば得点できることがあります。
一方で、記述式では結論に至る過程も重要になります。
記述式の点数が伸びない人の特徴として、解いた問題に対して模範解答を確認し正誤をつけただけで勉強を終わらせてしまうことが挙げられます。
しかしこれだと、当然問題文の中で着目べき箇所、正解にいたるまでのプロセスを理解できません。
たまたま良い点数を取れることはあってもそれ以上は伸びません。本番で偶然を期待するのはとても危険なので避けるべきでしょう。
そのため、日頃から模範解答をチェックするときには正答例以外にも解説をしっかり読み込みむのが必須です。
その答えに至るプロセスや着目点にも注目し、丁寧に勉強を進めていけば、自然と力はついてきます。
記述が収まっていますか?
記述式の問題は、解答を40字以内に収めなければなりません。
記述式の問題を解いていて、いつも長くなりすぎて40字に収まりきらない人も多いかと思います。
このケースでは、知識量が十分であるが大事な論点の判別がついていないことが原因になります。
知識は十分なので、余計な事を書かずシンプルに問われていることのみに答える練習をするだけで得点が上昇するでしょう。
問題によっては、誰に対して、何に該当し、どのようなことをするのか? といった記述すべき事柄についての明確な要件が定まっているものもあります。
題意を理解し、その条件に当てはまるようにそのまま記述しましょう。
逆に、いつも10~20字など、圧倒的に不足している人は勉強不足です。
大事な論点や、書くべき要素が書けていないため、基礎に戻ってしっかり復習を行うことが求められます。
必見!わからなくても部分点を狙う方法
記述式問題では、完璧な回答が書けなくても部分点を取ることができ、それにより合格圏に届くこともあります。
以下では部分点を取るために意識すべきポイントを見ていきましょう。
回答を導くためのステップがある
回答を導くためには以下の4つのプロセスがあります。
- 問いをしっかり把握すること
- 問いで聞かれていることから答えの形をつくること
- 答えに必要な法律の条文や判例を思い出す
- ②で作った回答の”型”に③で思い出した条文を穴埋めする
まず①では、問題文をしっかり読んで「なにを聞いているのか」「何を答えさせようとしているのか」など、出題者の意図をくみ取るようにしましょう。
②が最も重要なステップで、ここが部分点の獲得に大きく関わってきます。
出題者の意図をくみ取り、正しい答えの形を作り出せれば、自然と綺麗な解答になります。たとえ満点を獲得できなかったとしても部分点はかなり期待できるでしょう。
部分点を得るためにも、自分が持っている「判例」「条文」「学説」の知識から、特に重要なキーワードを引き出して記述に少しでも多く組み入れましょう。
記述式で問われる知識と、選択式で問われる知識に大きな違いはありません。この際に重要なのは、
「聞かれていること以外には触れない」ことです。
豊富な知識を持っている人ほど、自分の知識を最大限得点に活かすために、余分な周辺知識まで解答に含めようとしてしまいますが、加点されるわけでもなく、無駄に枠を消費してしまいます。最悪の場合、本来回答するべきポイントが抜け、得点が伸びなくなってしまいます。
③と④は、②において作り出した解答の肉付け作業になります。こういった条文や判例がある、といった証拠付けができれば十分でしょう。
以上、このような流れを意識して記述式問題に取り組んでみてください。コツをつかむまでなんども繰り返し学習するのが良いでしょう。
民法なら法律の規定
過去の出題を見ると、民法の範囲では「~という場合に裁判所はどのような規定によりどういった判決を下すことになるか」という問題が多いです。
これらの問題には「~という規定で・・・という判決を下す」という答えの”型”を意識し、日ごろから練習しておいてください。もちろん40文字以内にまとめることも合わせて練習しましょう。
仮に下される判決がわからなくても規定部分だけでも書ければ部分点をもらえる可能性が高いです。もちろん逆に判決の結果だけ覚えているけど規定に関しては曖昧なときも、あきらめずに部分点を狙いに行きましょう。
わからないからといって諦めてしまうのが一番悪いことです。なんとか得点を拾って、最低でも2問で20点は取れるようにしたいところです。
行政法なら主体と客体
過去の出題を見ると、行政法の範囲では「~のときAのBに対してとり得る手段について答えよ」というパターンの問題が多いです。
主体と客体を常に意識するようにしてください。 登場人物、状況が複雑なシチュエーションの問題が多く見受けられるため、まずは正確に問題文を読み込めるかが大事になります。
こういった問題に対しては「AがBに対して取りうる手段」のさわりの部分だけを書けているだけでも部分点を獲得できる可能性があるので、諦めずに取り組みましょう。
行政法の記述は民法に比べれば難易度はそれほど高くなく、過去問をしっかり取り組んでいれば解けるレベルだと言えるでしょう。
記述式対策におすすめの問題集
記述式問題では、過去問を解きつつ基礎知識を積み上げていくことも重要ですが、そもそもの解き方について学ぶこともまた重要です。
ここでは記述式の力をつけられるおすすめの問題集を3つ紹介します。
おすすめ問題集3選
記述式対策のおすすめ問題集としては、以下の3つが挙げられます。
- 出る順行政書士40字記述式問題集
- みんなが欲しかった!行政書士の40字記述式問題集
- 合格革命 行政書士40字記述式・多肢選択式問題集
以上3つはカラー刷りで要点も整理されており非常に分かりやすい構成になっています。
いずれも受験生からも人気がありとても好評を得ていますが、敢えて1冊に絞るとすれば「出る順行政書士40字記述式問題集」が最も利用者が多く、信頼度が高いでしょう。
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勉強法を学べる書籍もある
記述式の効率的な勉強法からしっかり学びたいという方は、大手資格学校の学習ノウハウを学ぶのもおすすめです。
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勉強の進め方の流れ
択一式の勉強を通じて基本的な条文や判例を覚える
行政書士の記述式問題では、基本的な論点が多く問われます。(もし難問が出てきたら他の受験生も解けないので安心してください)
そのため、過去に出題されている条文・判例を覚えていくのが効率的です。
なお、択一式試験の問題文がそのまま記述式問題の模範解答となるケースもあります。
択一式の過去問などに取り組んでいるときから記述式を意識すると良いでしょう。
過去問を徹底的に解く
過去に出題された記述式問題は、択一式で問われた条文判例がとても多いです。
つまり択一式の過去問を徹底的に勉強し、コツコツ暗記することが記述式問題対策になるのです。
苦手意識を持たない
小論文ほどの文章ではなく、40字以内で簡潔にまとめるのは実際にやってみるとなかなか難しいものです。
しかし、苦手意識を持つと投げやりな解答になってしまうので、過去問演習を通じて苦手意識を少しずつ払拭しましょう。
しつこいようですが、「問われていることに対してしっかり解答し」、「キーワードを使いながらわかりやすい文章で書く」ことを意識してください。
行政書士の記述式問題のまとめ
行政書士の記述式問題に関するまとめ
-
配点が非常に高いので十分な対策が必要
-
出題意図をしっかりとくみ取ることが何よりも重要なポイント
-
完璧な解答が作れなくても、分かる部分をしっかり書けば部分点も狙える
-
登場人物が多いときは図を用いて関係性を明確にする
-
記述式の基礎となる知識は択一式の勉強を進める中で身に着ける
行政書士の記述式問題は他の資格ではなかなか見ない出題スタイルです。
そのためできるか不安になることがあるのは自然なことです。
択一式問題を通じて基本的な知識を身につけ、その後市販の記述式問題に特化した過去問集をこなせば、十分に得点できる力がつきます。
日頃の勉強から本番を想定して、しっかり理解できていない論点の出題に対しても諦めずに解答することを心がけてください。