司法試験の短答試験の勉強法は?配点・合格率・合格点・足切りの実態まで解説!
「司法試験の短答式試験はどのように対策していけばいいの?」
「配点や合格率などのデータはどうなっているの?」
このような疑問をお持ちの方、いらっしゃいませんか?
司法試験は、択一問題の短答試験と論文試験に別れており、短答試験の対策が優先になります。
どのような勉強法で対策をしていけばいいのか、足切り基準はどうクリアしていけばいいのか、気になる人も多いと思います。
こちらの記事では、司法試験の短答式試験の配点や合格点などのデータや足切り対策などについて解説していきます!
短答式試験の対策についてざっくり説明すると
- 択一方式で出題され、合格ラインはおよそ6割
- 合格率は7割近くあるため、セオリー通り対策すれば問題ない
- 各科目で足切りの基準があるため要注意
- 過去問をフル活用した勉強法が効果的
短答試験の科目と配点・勉強法の基本
短答試験では、憲法・民法・刑法の3つの法律の知識が択一問題形式で出題されます。
これら3法は「上三法」と呼ばれ、他の法律を学ぶ上でも基幹となる必須科目であるため、丁寧に勉強を進めていきましょう。
なお、後述する論文試験ではでは上三法に加え、さらに4つの法律の知識が問われることになります。
司法試験は相対評価で合否判定されるため、落としてはいけない基礎問題を落としてしまうと致命傷になりかねません。
試験科目は膨大なのでメリハリをつけつつ、基本問題や重要論点を落とさないように対策をすることが大切です。
なお、出題には一定の傾向があるので、過去問を解きまくるのも有効な対策となります。
短答試験の配点は以下の表の通りです。
科目 | 配点 |
---|---|
憲法 | 50点 |
民法 | 75点 |
刑法 | 50点 |
短答試験と司法試験制度
司法試験は、例年毎年5月中旬に4日間の日程で実施され、短答試験はその中の最終日に1日かけて行われています。
司法試験で、短答試験と論文試験の配点の比重は1:8であるため論文試験の方が圧倒的にウェイトが重いです。
つまり、試験全体の中の短答試験の配点としては決して高くはありません。
しかし、司法試験の特徴に「短答試験の得点が基準点に達しないと論文試験の採点を行わない」ことがあります。
つまり、最低でも基準点以上の得点をしなければ不合格が確定してしまうのです。
論文試験の方が難易度も上がるので、論文試験を突破する実力のある人であれば、短答試験も難なくパスできます。
合格率・合格点
近年の短答試験の合格率は70%程で推移しています。
175点満点中、108点程が合格基準点となっているため、全体で6割ほどの得点が必要になります。
普段の勉強で、8割程度の得点を目指すイメージで行えば合格レベルに達することができるでしょう。
ただし、公開されている合格基準では、「各科目で最低でも40%以上の得点」が必要になるため、足切り基準には細心の注意を払う必要があります。
足切りの実態
「全体の6割程度の最低点合格点を下回る」または「一科目でも40%以上の得点ができなかった場合」は、その時点で短答試験の不合格が決まります。
択一の短答試験が不合格だと、どれだけ論述試験の出来が良かったとしても採点はされません。
そのため、安定的に6割以上の得点をする学力を身に着けることと、極端に苦手科目を作らないことがとても重要です。
苦手な分野などが出てきても、すぐに諦めて捨ててしまうのではなく、できる限り得点できるように努力をしましょう。
科目合格制度は存在しない
司法試験において、科目合格制度は存在しません。
つまり、受験して特定の科目で良い成績がとれたとしても、その年の試験の全体の点数が合格ラインを下回った場合は、翌年にまた全科目を受験しなければなりません。
つまり、苦手をあまり作らずに試験全体で合格点を取る必要があるのです。
そのため、満遍なく勉強することが他の資格試験以上に大切になり、合格への近道にもなるのです。
もし勉強の過程でよく分からない問題や苦手分野が出てきたら、徹底的に潰していく作業が必須となります。
短答試験の勉強法の重要ポイント
インプットから始める
短答試験の勉強法としては、まず最初に基礎的な論点や判例のインプットから始めるのが一般的です。
基礎的な論点はその後の勉強の土台となるため、必ずしっかりと行ってください。
インプットの手順は、まず予備校の講義を聴いたり、基本書を読んだりして着手していくことがオススメです。
司法試験の勉強すべき量は膨大なので、一度でインプットしようとしても無理でしょう。
そのため、インプットは繰り返しコツコツと行うのが大切です。
また、インプットがある程度済んだら、過去問や予想問題集を解いてアウトプットを行ってみると良いでしょう。
アウトプットを行うことで、インプットが甘い論点が把握でき、また問題を解くための知識が定着していきます。
このような基本サイクルは、論文試験の対策にもつながるため丁寧にインプットとアウトプットをするクセを付けておきましょう。
過去問対策が重要
短答試験の過去問は、東京リーガルマインド・伊藤塾・辰巳法律研究所・Wセミナーなどの予備校各社から丁寧な解説付きで市販されています。
過去の出題傾向を見てみると、頻繁に出てくるような出題形式があり、過去問の類似問題が出題されることもあるため、過去問対策は非常に有効です。
解く量の目安としては、10年分は解きましょう。
1周目解いていく中で、不安な問題には△、間違えた問題には×などの印を付けておき、2周目以降で△・×のついた問題を無くしていくという進め方がオススメです。
過去の問題を何度も解くことで、正誤の判断ができるように進化することは期待できます。
ですが、試験では完全に同一の問題文が出ることは稀で、似たテーマの問題が異なる角度から出題されることが多いです。
類似の問題やその派生形に対応するためには、答えがどうしてそうなったのかの背後にある理論や原因を完全に把握することが不可欠です。
したがって、過去問の練習時に、解答の背後にある根拠や理由をしっかりと捉えることが重要です。
これだと自分の知識が増えているという実感も得やすいため、モチベーション維持にも役立ちます。
1周目は、当然自信がなかったりわからない問題も多く大変ですが、2周目以降では解くスピードが早くなり正解数も増えていくでしょう。
一貫して8割得点できるようにする
短答式試験での高得点は司法試験や予備試験における成功の鍵となります。
司法試験の短答式試験で6~7割正解すれば合格可能ですが、この部分の得点は最終合格の点数に影響します。したがって、この部分で高得点を獲得することは、他の受験生との競争でのアドバンテージを意味します。
一方、予備試験においても短答式試験で全体の6割の正解が必要です。特に、一般教養科目を除く法律科目で8割の得点が可能なら、法律科目の得点だけで合格ラインを超えることができます。このことから、一般教養科目の時間を法律科目の勉強に振り分けるのは効果的な方法と言えるでしょう。
結論として、法律科目でどれだけ得点を上げられるかが、試験勉強の効率を上げるための重要なポイントです。
条文の素読
短答式試験でよく条文そのものが問われるため、六法の条文を素読するという方法が考えられます。
多くの人がこの方法を採用する理由として、大量の条文から関連するものをぼんやりとでも特定できるようになるとの経験を指摘しています。具体的には、「全てを一度は読んだので、問題の条文はあの辺りだろう」といった感じで特定の条文を探す感覚が身につくというのです。
しかしながら、すべての人が条文の素読によって短答の得点が向上するわけではないことも事実です。
結論として、条文を素読する方法は効果的な勉強法の一つであるとされていますが、それが全ての人にフィットするわけではないので、あくまで一つの選択肢として捉えるべきでしょう。
- 素読の方法 ・法律の第1条から終わりまで順番に読む
・括弧内の文はスキップし、メインの文章だけに注目する
・関連する条文や準用条文へは基本的に戻らず読み進める
・毎日約1時間のペースで続けて実践する
- 重視すべきこと
・ただ読むだけでなく、以下の要素を重視して読むこと
-
条文の背後にある主旨や目的
-
条件や前提と、それに伴う結果
-
関連する議論や該当する判例
法改正には注意
2020年の試験から、改正民法から出題されています。
そのため、これまで勉強してきた民法の過去問をそのまま解いても正確な知識にはならず、逆に混乱してしまいます。
しかし、既に改正民法に対応済で編集が施されている短答過去問集も市販されているので、こうした問題集を使うようにしましょう。
法改正の論点はよく狙われるため、重点的に対策しましょう。
司法試験の短答と予備試験の短答の違い
司法試験の受験資格に「予備試験に合格していること」があります。
その予備試験の短答試験は、司法試験と同日に行われています。
両試験には共通する問題も多く出題されるため、予備試験といえども問題の難易度は司法試験とほぼ同じレベルです。
しかし、予備試験の短答試験では憲法・民法・刑法の他にも、民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・行政法・一般教養の短答試験も課されるため、出題範囲がとても広いです。
つまり、予備試験合格ルートで司法試験に臨んでいる人は司法試験の短答をクリアする十分な実力を備えていることになります。
なお、予備試験合格ルートの他に法科大学院ルートがあります。
こちらのルートでも、法科大学院で2~3年かけて勉強した実力を生かすことができれば、短答試験に十分対応できます。
基本的な勉強スタンスは変えずに、インプットとアウトプットを行えば問題ありません。
短答試験対策時間
短答試験に合格するためには1年~2年程度法律の勉強をする必要があると言われており、時間に換算すると約1,000時間~2,000時間の勉強時間になります。
論文試験に進むためには短答試験の合格が必須であるため、短答試験の合格は司法試験科目の基礎知識の習得の証となります。
出題は択一方式であるため、選択肢を一つ一つ見極める必要があります。
問題ごとに難易度のばらつきはあるので、自分ができそうな問題か捨てるべき問題なのかの取捨選択も必要です。
まず優先するべきことは、落としてはいけない問題を確実に得点できるようにすることです。
全問の正解は不可能なので、「難問は捨てる」と割り切る判断力も重要です。
論文試験の試験科目と勉強時間
論文試験は短答試験よりも範囲が広がり、公法系科目と民事系科目、刑事系科目、選択科目の4科目が課されます。
論文試験の合格率は、約30% です。
公法系では憲法・行政法、民事系科目では民法・商法・民事訴訟法、刑事系科目では刑法・刑事訴訟法、選択科目では知的財産法・労働法・租税法・倒産法・経済法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)・環境法の中から1科目を選択します。
論文試験に合格するには短答試験以上の勉強が必要で、3,000~8,000時間の勉強時間が必要であると言われています。
なお、この数字は短答試験対策を含めた数字と言われており、論文対策に限ると約5000時間が必要と言えます。
短答試験と論文試験の難易度を比較
短答試験の合格率は、全受験生の70%程です。
一方、論文試験の合格率は全受験者の30%程と一気に狭き門となります。
また、試験科目数の面でも短答試験は3科目であるのに対し、論文試験では憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法・商法・選択科目の計7科目の試験が課されるため、出題範囲が格段に広がります。
日程上でも論文試験の試験は3日間かけて行われるため、負担は非常に重いと言えるのです。
すべてを勘案しても、短答試験より論文試験の難易度の方が圧倒的に高く、綿密な対策が必要なのです。
科目ごとの難易度・合格率と必要な勉強時間
憲法(短答試験)
憲法は国の最高法規でこれまでに中学や高校でも勉強する機会もあったため、最初に学習するのが一般的です。
憲法解釈を巡る学説の対立なども出題されることがあり、憲法論独特の難しさがあります。
暗記で得点できる箇所もありますが、学説とその論点の把握が大切になってきます。
また、判例に関する出題もあり、こちらの学習も非常に大切になります。
判例問題では、合憲か違憲かのという判決だけを暗記するだけでは足らず、判決に至る理由まで理解しておかなければなりません。
細かい内容が問われることも珍しくないため、直前期には各判例の細かい内容まで一度目を通しておくことをおすすめします。
民法(短答試験)
民法は勉強量がもっとも膨大な科目であり、多くの受験生を苦しめている鬼門科目です。
メリハリをつけつつ、根気強く勉強することが重要です。
特に、弁護士は司法試験合格後の実務として民法と接する機会が多いため、入念に勉強すると良いでしょう。
民法は短答試験の中でも配点が高い科目でもあるため、試験科目の中で最も難しい科目と言えるでしょう。
短答式試験の対策の中では、なるべる多くの勉強時間を割いて苦手意識を払拭できるように心掛けるべきです。
勉強の進め方としては、これまで学習を重ねてきた条文と判例をスタンダードなものを中心に着実に抑えていき、同時に過去問を使って知識の定着を図っていくと良いでしょう。
論文式試験の対策に比重を置くあまり、細かい知識が疎かになってしまい失点の元にも繋がりやすい科目ですので、決して油断せずに基本知識をメインに抑えていくと良いでしょう。
刑法(短答試験)
刑法は憲法・民法と並んで「上三法」と呼ばれる基幹科目です。
刑法は論理的な考えが強く求められるため、独特の難しさがあります。
しかし一方で興味は持ちやすい科目でもあるため、特に好きな科目として挙げる受験者・合格者も多くいます。
弁護士・裁判官や検事になった場合には実務上多くの使う法律であるため、実務をイメージしながら学ぶと良いでしょう。
押さえるべき論点は多いですが、結果無価値論の立場と行為無価値論の立場など、主要な二項対立の構造に落とし込んで論点を把握すると、うまく整理できるようになります。
いきなり司法試験に挑むのは不安だという人は
司法試験は国家資格でも最難関の難易度なので、いきなり勉強することに不安を抱く人も多いと思います。
大学に在学中の人であれば、憲法や民法などの法律系科目を履修するなど、積極的に法律と関わるようにしましょう。
学生でない人は、行政書士や司法書士など、司法試験よりも難易度が劣る他の法律系資格の勉強をしてみると、良いウォーミングアップになります。
特に行政書士と司法書士は、司法試験と科目の重複が多いため、法律の勉強に慣れる意味でもとても有意義です。
出題範囲は司法試験ほど広くないため、各法律の主要論点や重要判例を知ることができるでしょう。
このように、積極的に法律と関わるようにして法律に対する苦手意識を無くしていきましょう。
司法試験予備試験の短答式試験の対策まとめ
短答式試験の対策まとめ
- 民法の配点とウェイトが重いので、重点的に対策が必要
- 足切りがあるため、苦手分野をできるだけ少なくすることを心掛ける
- 択一式の形式に慣れ、出題傾向や重要論点の分析をしっかり行うと良い
- 過去問を解くと実践力が磨かれるので重点的に取り組むと良い
司法試験の勉強は長丁場になるため、しっかりとスケジュールを組み計画的に進めていかなければなりません。
特に民法は初見だと理解しづらい科目なので、丁寧に勉強して着実にインプットしていきましょう。
また、各科目ごとに足切り基準も設けられているため、苦手をできるだけ作らない勉強法も求められます。
択一問題だからといって油断せずに、細かい論点で押さえるように心掛けてください。
司法試験は超難関資格ですが、ぜひ合格を掴み取ってください!